RICOH AUTO HALF E(オートハーフE)のレストア

ストラップやバッグの商品撮影で、モデルとして登場してもらう「フィルムカメラ」たち。

実動品を中古で買ったものもありますが、大半がジャンク品だったものを自分でクリーニングや分解修理をしたもので、一応全て撮影できる状態になっています。

ただ、細かい部分で完全に直っていないこともあるので「動作する状態に戻した」というのが正しいでしょう。でも、壊れていたものがまた動くというのは嬉しいもので、ものづくりの勉強にもなります。


「分解修理」のことを「レストア」(restore)と呼ぶのですが、職業の方は勿論、趣味でレストアされている方もたくさんいらして、私もレストアの際には書籍やネット記事を参考にさせてもらっています。ですが、結構マイナーな内容ですのでネットであまり情報を得られない機種もあります。今回修理したオートハーフEについては、折角なので備忘録も兼ねて自分で得た情報を記録しておこうと思います。


下の画像がリコーのオートハーフEです。
偶然出会った花柄模様versionに惹かれて、シャッターが不動というのは承知して購入しました。

かわいいんですよね!筐体の大きさといい、花柄もレトロな感じでGOOD。ちゃんと動作させたい!


症状


「シャッターボタンが押せない」

「ゼンマイが無限に巻ける」


初期チェック


昔のカメラはフィルムが充填されていないと正常に動作しない場合があるので感光済みのテスト用フィルムで動作チェックをします。

それと「シャッターが押せない」わけではなく、実は「シャッターロックができる」カメラもあるので、それを知っておく必要があります。以前、中古で手に入れたばかりの二眼レフAUTOCORDはシャッターボタンが押せませんでした。分解してもおかしいところも見つからず、万事休すと蓋を閉じ終えたとき、まさかのシャッターボタンがくるっと回せることに気づき…ロック機能があったのか…。

水が出ない出ないと騒いだら元栓が締めてあった感じです。

今回はフィルムを入れるとシャッターボタンが押せるように!

スプロケットというフィルム送りの歯車を回しきるとシャッターボタンが押せる機構であることが分かりました。これで問題は1つクリア。

あとはゼンマイか。

オートハーフは名前の如く、写真を撮るとフィルムを自動で送ってくれるカメラで、その動力をゼンマイで作っています。普通ならゼンマイを巻く限界があるはずなのに、ゼンマイが空回りしてずっと巻けます。これは多分「ゼンマイ」が怪しいという見立てで進めることにしました。


手順


まずお約束ですが、

分解は保証の対象外となりますので自己責任です!

ということと、

ケガをしないように万全な対策をして下さい!

ということを念頭においてください。

今回はグリップ手袋をして作業しました。カメラをはじめたばかりの方などは結構気軽な気持ちで分解するかもしれないのですが、内臓フラッシュのあるカメラはコンデンサを放電させてからでないと感電します!

ビビッときて本当に危険です。

安全第一で取り組みましょう!


では、始めます。

カバーをあけるために、シンクロ接点と三脚座金のカニ目をはずします。

逆サイドのフィルム室蓋の開閉ボタン(カニ目)をはずし(軸にスペーサーがあるので無くさないように)、マイナスネジ2本で銘板をはずし、更に黒い小ねじをはずす。

三脚座金がひっかかるのでずらしながらカバーを外します。セレンとの結線が切れないように注意。

下の画像、WINDと書いてあるゼンマイのカバーはこの下のネジを隠すためなのですが、これが曲者というのは分かっていました。ネットではきれいにはがされている方たちがいらして感心しましたが、こちらの個体は接着剤が満遍なく塗られている様で全く剥がせませんでした。

救うためには仕方ない!意を決して少しずつ薄いマイナスドライバーで剥がしていきます。何か代用品を貼り直すことにして、力を入れて剥がします。

無惨な感じです…。分解すると犠牲にしなけらばならない部分が出てくることって結構ありませんか?こうなると絶対に直すという闘志が湧きますね(苦笑)。

これをはがした下にはネジが三本あるのですが、これまた接着されている?ネジが一本あったので

ミニルーターでネジ頭を破壊(残り二本だけでも固定はしっかりしそう)、無事に残り二本をはずして進みます。(写真なし)

次に上カバーを外します。

ねじをはずしてこの黒いカバーを引くとゼンマイ周りにリング状に巻かれたバネが跳ねますので注意が必要です。

上の写真の風車のようになっているラチェットユニットが、シャッターロックをかけたりゼンマイによるフィルム巻き上げを許可したりする機構の様です。若干固着気味で動きもあまり良くなかったので、このユニットを取りはずすと歯車がたくさんでてきます。


上の歯車にグリスが固着していたり、ピンクの丸で囲んだ部分の動作がスムーズではありませんでした。ここも重要な構造部で、青い矢印をつけたものがシャッター制御と連動する部品、赤い矢印は半回転動作するヘッドが付いた部品で構成されます。シャッターボタンを押すと黒色のカムが青矢印方向に動き、ボタンを放すと戻ります。そのとき黒いカムが赤矢印のついた半回転ヘッドにぶつかってそこから繋がるカムが前出の風車ラチェットを解放してゼンマイの軸を回転させフィルム巻き上げが動きます。その間はシャッターロックのカムが連動しているし、うーん、すごい仕組みですよね。言葉では伝えきれてないです…。フィルム巻き上げでフィルムのパーフォレーションに沿ってスプロケットが回るのですが、パーフォレーション4穴分動くと(ハーフカメラなので1コマ分。フルサイズなら8穴動いて1コマだそうです。)フィルム巻き上げを停止するために風車ラチェットがロック側に戻って一連の動作は完了します。

何のこっちゃって感じですね、ホントに機械式はすごくよく考えられていて芸術的です!


では、一番問題の部分に行きます。ゼンマイ部です。

この蓋をはずすために、バイスで固定して、半月の穴部分に千枚通しを刺して軽くゴムハンマーでこじ開けました。

開きました。やっぱりゼンマイと軸が外れています。

軸には少し釘の頭のような引っ掛けが付いていて、バネの端には楕円上の穴が開いていました。そこになんとか引っ掛けてやり、外れないようにバネの端を軸にそってきちんとまげてやります。完成したとこの写真を撮り損ねましたが、上の写真でバネの端が軸に巻き付いている状態にさせました。多分、逆にまわすとかするとすぐ外れちゃうかもしれないですね。自分しか操作しないのでこれ以上の対策はやめておきました。

さて、全部戻して完了です。

ゼンマイ回しの蓋はイタリアンレザーを貼り込み、回転方向は矢印を刻印。

はい、フィルム巻き上げの動作をするようになりました!!!

電池も必要なく、ゼンマイを回しておくと自動で動作するっていう優れもの。

本当ならセレン部分とAE動作を直したいところですが、

今回はここまで。すでにオートハーフEには作品撮影のモデルとして活躍してもらっています。


長くなりましたが、レストアのお話はここまで。

なるべく間違いがないように慎重に書いたのですが、

少しでもカメラファンの方の役に立てればいいなと思っています。

あー、フィルムで写真が撮りたくなってきました!


それでは、よいカメラライフを!


2022/1/26追記

2年前に書いたこの記事をご覧になった方から、

どこでストラップを販売しているかというご質問を頂きました。

ネックストラップの販売の方が多いのですが、

オートハーフに合うタイプのハンドストラップも時々制作していますので

ご関心ありましたら以下のネットショップをご覧下さい。


ハンドストラップⅡ(カメラ接続端:紐式)

ハンドストラップシリーズの新作を制作しました。カメラ接続側を紐式コネクターにしているため、平紐やリングを通せないストラップホールのカメラにも対応しています。強度としてはコンパクトなカメラ(500g以下が目安)に向きます。<スタイル>・イタリアンレザーの色は黒。オイル入りが強く使い込むほどに馴染んで光沢も出ます。・ストラップ幅は10mm、長さは25cmとゆったりとした作りです。・アジャスター(サル革)を手首周りまで締めてすり抜けを防止できます。・先端の紐式コネクターは取り外しが可能なのでカメラの脱着が楽です。<裏地無し>裏地を付けず、革の裏面(「床面」)を仕上げ剤で磨いてばさつきが出にくくしてあります。革素材がそのまま活かされたラフな雰囲気で、使うほどに革が柔らかくなっていきます。<強度についての注意点>革の伸びにくい繊維方向で使用、厚さも通常より厚め(2.1mm)にしてなるべく強度を保つようにしていますがカメラ荷重は最大で500g程度に留めてご使用下さい。ぐるぐる振り回すことも避けて下さい。【サイズ】革部分 長さ:25cm(コネクター含まず)幅:10mm【発送】クリックポスト(ポスト配達)【ご注意】 ※写真中のカメラは付属しません。※実物の色を再現するように画像調整しておりますが、  お使いのモニターや端末によって色が若干違って見える事があります。 ※皮革は部位によってシワやスジ、傷等がある場合がありますが、 天然皮革の特徴としてご了承ください。

Creema


紐式ストラップ for 写ルンです・AUTOHALFなど | MilezaWorks/ミレザワークス powered by BASE

ストラップホールが紐しか通せないタイプのカメラ、結構ありますよね。リコーのGRシリーズ、ソニーのサイバーショット、キヤノンのIXY e.t.c..今回は特にシングルホール式(一点吊り型)のカメラに向くストラップを制作しました。今でも人気がある「写ルンです」もこのタイプのカメラです。使用した革はイタリアンレザー。革の使用部分は多くはありませんが、取付けヘッド部はちょっと目を引く色合いにしました。(レンガ/リバーブルー)首あて部は落ち着いた色(チョコ)で1.5cm幅×26cm長と細身で邪魔になりません。取付けヘッド部は取り外してカメラへの取り付けが可能です。ヘッド全体がストラップに沿って動くので撮影時もカメラを動かしやすいです。ストラップ紐は蝋引きされたワックスコードを使用しています。(今回の紐色はブラウン)経年変化する革のように使っているうちに紐表面に光沢が出ます。紐は長さ調整できるような結び方をしていますので、ななめがけをされたい場合は周長130cmまで伸ばせます。軽くてシンプルなストラップにお気に入りのカメラを付けて、ちょっと撮影に行きませんか?【素材】取付けヘッド部及び首あて部:牛革(イタリアンレザー)紐:ワックスコード【サイズ】全長調整範囲:100~130cm程度首あて部 幅:1.5cm 長さ:26cm取付けヘッド部 横:2.5cm 縦:8cm(根付け紐長さ3cm含む)【発送】クリックポスト(ポスト配達)【ご注意】 ※写真中のカメラは付属しません。※実物の色を再現するように画像調整しておりますが、  お使いのモニターや端末によって色が若干違って見える事があります。 ※皮革は部位によってシワやスジ、傷等がある場合がありますが、 天然皮革の特徴としてご了承ください。※皮革は傷がついたり、移染することがあります。 水や汗などによる濡れにはご注意下さい。

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milezaworks / レザーや帆布を使ったバッグ・革小物の制作 Leather and Canvas Bag Products

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